Vivy -Fluorite Eye’s Song- Vivy -Fluorite Eye’s Song-

――私の使命は、歌でみんなを幸せにすること ――私の使命は、歌でみんなを幸せにすること

SPECIAL

キャスト対談
2021.05.07

『Vivy -Fluorite Eye's Song-』キャスト対談

ヴィヴィ役・種﨑敦美
マツモト役・福山 潤
■100年の旅でヴィヴィはどう変化するのか?
――6話までの放送を終えましたが、あらためてシリーズ前半を振り返ってみての感想を伺えますか?
種﨑敦美 私は『Vivy』という作品全体を通して“歌”が本当に大切なものとして描かれているんだなと、エピソードを積み重ねるごとに強く実感しましたね。同じ曲でも一人で歌っている時と二人で歌う時で全然違った印象に聞こえたり、はたまたただの音階データにもなりえたり…

福山 潤 音楽に関しては僕たちも各話が出来上がって 初めて聞くんですよ。ヴィヴィの歌は1話で「My Code」、3話で「A Tender Moon Tempo」、そして4話でオープニングテーマの「Sing My Pleasure」がお披露目されました。その上でさらに、ヴィヴィの姉妹機であるシスターズが歌う曲まで用意されていて、とても贅沢な作りだなと感じましたね。

種﨑 4話のエンディングで、エステラとエリザベスが歌う「Ensemble for Polaris」を聞けたことが嬉しかったです。3話はエステラのソロバージョン、4話は二人一緒に…たまらなかったです。
――ヴィヴィの歌唱担当は八木海莉さんです。声を担当した種崎さんから見て、八木さんはいかがでしたか?
種﨑 歌声がとても綺麗で「こんな風に歌えたら気持ちいいだろうなぁ」と憧れてしまいます。これでまだ10代の新人だなんて……。これから八木さんがいろいろな経験をして、どんどん成長していく最初の姿を、私たちは目撃しているということですよね。多くの出会いを通じて少しずつ変わっていくヴィヴィと少し重なる部分もあるのかなと感じています。

福山 僕は歌についても勝手にあれこれと想像しているんです。ヴィヴィが劇中で初めて歌った曲が「My Code」ですけど、話が進んだら別バージョンが出てくるんじゃないか、とかね(笑)。『Vivy』はヴィヴィが100年の旅を経て変化していく物語ですから、歌についてもそういった仕掛けを盛り込んでくるのではなかろうかと。そんな想像をかきたてる曲が多いのも作品の魅力だと思います。

種﨑 この先、音楽が『Vivy』の世界をどう彩っていくのか、私も楽しみにしています。
――続いて、各話について順番にお聞きしたいのですが、まずヴィヴィとマツモトが出会った1話と2話のお気に入りのシーンから伺えるでしょうか。
種﨑 パッと思いついたのはマツモトのぬいぐるみ状態ならではの可愛い動き全般です(笑)。最初にシナリオを読んだときは、マツモトがどんなキャラになるのか、誰がどんな風に演じるのが正解なのか全然想像がつかなくて…。でも1話で福山さんのお芝居を聞いて、これ以外には考えられないと思えるほどの「マツモト」が目の前にいたんです。『Vivy』が始まってから福山さんとイベントや番組でご一緒する機会が増えたのですが、今でもマツモトと喋っているような気になるくらいです(笑)。

福山 僕はマツモトと同じで喋ることが大好きなので、台本を見てセリフが多いと嬉しくなるんですね(笑)。だから演じるのが楽しかったですし、さらにマツモトは、自分の言動が相手にどんな印象を与えるのかをまったく気にしない。だから人に嫌われるようなセリフを堂々と言えるという、ある種の爽快感もありました(笑)。2話にはヴィヴィに未来の情報を小出しにしていることを責められるシーンがありましたが、そんなときも「あなたを信用していないからです」と、皆さんから反感を買うような嫌なセリフをきっぱりと言うんですよね。あのセリフのおかげでマツモトが演じやすくなって、僕にとっては重要な一言でした。
――ヴィヴィについて、種崎さんは以前のインタビューで「とても人間くさい子」だとおっしゃっていました。
種﨑 はい。ヴィヴィは「歌で、皆を幸せにする」という使命を持っていて、それはAIならではのものであるはずなのに、それをとても大切にしているというその部分に人間味を感じてしまいました。いま福山さんが挙げたシーンの直前では、マツモトに対人戦闘用の運動プログラムを勝手にインストールされそうになり、歌唱機能への影響を気にしていましたよね。その瞬間の反応といい、態度といい、人間のような機微を持ち合わせているところが、ヴィヴィがAIでありながら変化、成長していけることに繋がっているのかなと思いました。

福山 ヴィヴィからは使命に殉ずる覚悟みたいなものを感じますね。100年の旅の目的は人間とAIの戦争が起こらないように歴史を修正することですが、1話と2話を見ると、その旅を通じて「ヴィヴィが何を得たのか」が物語上の一つのテーマになっていることが伝わってきます。『Vivy』の幕開けに相応しいエピソードだなと思いましたね。
■マツモトのアドリブへの対処法
――続く3話と4話は、宇宙ホテルの地球への落下を防ぐというエピソードです。
福山 1話と2話はヴィヴィとマツモトのバディを丁寧に描いていましたが、3話と4話のマツモトは傍観者に近いんですね。もちろんミッションの目的を伝える役割は果たしていますが、ストーリー面ではヴィヴィとエステラがメインに描かれています。マツモト役の僕としては『Vivy』という作品を俯瞰して見られる良いタイミングでした。
 自律人型AIがどこまで人間に近い“心”を持っているのか、シスターズとはどんな存在なのか、そうした設定が直截は言及されなくても、ドラマの中で自然と頭に入ってくるようになっています。バトルや歌唱シーンなどのエンタメ要素も盛りだくさんな一方で、『Vivy』という作品に通底している「“心”とは一体何なのか?」という疑問にも踏み込んでいる。今後の展開に向けても重要なお話だと思いました。

種﨑 そうでしたね。あとお芝居面でいうと覚えているのが、2話と3話の間で15年も時間が経過していて…だから?なのかはわかりませんが、アフレコでもマツモトがヴィヴィの前に久々に姿を現したときは、どことなく緊張してしまって……。

福山 僕もあの再会シーンは、どういう風に演じるのが適切なのだろうかと悩みました。ヴィヴィは実際に15年の時を過ごしているのですが、未来からやってきたマツモトにとってその時間は単なる情報のようなものに過ぎない。それに2話のラストが、あんな結末でしたからね。だから3話ではヴィヴィに対して少し固めに接していて、4話になったらそれが少し薄れているようにしました。

種﨑 そうだったんですね…!あの時はなんでこんなに緊張しちゃうんだろうと思っていましたが…約1年越しに謎が解けました(笑)。
――前半ラストの5話と6話は、海上無人プラント・メタルフロートの機能を止めるというミッションに挑みます。
福山 1話と2話はマツモトとヴィヴィ、3話と4話はヴィヴィとエステラ、さらにエステラとエリザベスというAI同士のやり取りが描かれました。でも5話と6話は冴木とグレイスという人間とAIの関係に踏み込んでいます。ヴィヴィは人間とAIの戦争を止めることが目的ですから、両者の直接的な関わりは絶対に踏み込まなければいけないテーマですよね。その冴木とグレイスの結末については……。

種﨑 私も6話は演じていて一番苦しかったですね……。うまく言えないのですが1話の頃がまだ何も知らない生まれたての赤ちゃんだとしたら5話6話あたりが思春期にさしかかった難しい時期というか…自分の全話数の台本を見返したら本当に6話だけ、台詞の横に「守りたい、だから」とか「こうしてくれたということはつまり」みたいな注意書きが書いてありました。細かく書いていかないと見失いそうになるくらい気持ちが繊細に揺れ動いていた回なんだと思います。目の前で起こることやセリフ一つ一つに敏感に反応して、彼女なりに決断していった結果…あの結末。

福山 視聴者の皆さんがどのように受け止めたのか気になります。
――ちなみにマツモトは5話でクマのぬいぐるみからからキューブ型になりましたね。
福山 マツモトの本来の姿であるキューブで演じられるのは嬉しかったですね。早くキューブにならないと、クマが本来の姿だと思われてしまいそうで(笑)。ただマツモトの形状の変化とともに5話からは僕のいつもの悪い癖が出始めてしまって……。
――悪い癖とはなんでしょうか?
福山 台本に無い台詞です(笑)。

種﨑 でも福山さんは、1話からアドリブ全開だったじゃないですか(笑)。ヴィヴィがマツモトを捕まえようとして身をかわすときの「ひらっ」も台本にはなかったんですよ。

福山 より大胆に遠慮なく出すようになったということですね(笑)。
――種﨑さんは福山さんのアドリブに対しては、何か応答などしたのでしょうか?
種﨑 作品や役柄が違えば、一役者としてはアドリブが飛んできたならなんとか打ち返したいと思うのはもちろんです……けど、ヴィヴィの場合マツモトに対しては「何が飛んできても全力でスルーするぞ」という気持ちでいました(笑)。福山さんのアドリブは本来台本にある誰のセリフの邪魔にもならない事はもちろん、それがある事によりシーンがより良くなるよう上手くコントロールされていて、どれも完璧だったので、私としては「どんどんお願いします」という気持ちでしたね(笑)。
■ヴィヴィとシスターズの共通点
――シリーズ前半ではエステラ、エリザベス、グレイスと3体のシスターズが登場しました。彼女たちについてはいかがですか?
種崎 エステラ役の日笠(陽子)さんが「品格を大事に演じた」とおっしゃっていたようにエステラは宇宙ホテルのオーナーを務めるほどの格調高い雰囲気もあり、その上でふわっと柔らかい雰囲気も漂っていて、本当に素敵だなと思いました。あと個人的推しキャラでもあるエリザベス。強いのに弱くて大好きです。3話ラストの内山(夕実)さんの「待って」というセリフがたまらなく好きで、さりげないのにいろんなものがぎゅっと詰まっていて、聞いた瞬間ゾワッとしてしまいました。そして実は一言も言葉を交わしていないグレイス。ヴィヴィは彼女のいろいろを想像するしか出来なくて、だからなんですかね…言葉はなくても彼女の表情一つ一つが痛いくらい強く刺さりました。

福山 僕は作中の設定に興味が向いていました。たとえばエステラの表情がヴィヴィよりも豊かなのは、作中で15年も時が経っているのでAIの性能が上がっているからだろうとか……。シスターズたちは、見た目はヴィヴィとはあまり似ていませんが、人間との関わり合い方は似ていると思うんですよ。エステラはライフキーパーとして人間のお世話をすることが、グレイスは看護AIとして人間の命を助けることが使命です。エリザベスも自分を拾ってくれた垣谷ユウゴに尽くしているという点では、人間に寄り添っている。
――7話以降の見どころについて教えてください。
種崎 うーん、言えないことが多いんですよね……。

福山 とくにヴィヴィについてはそうですよね(笑)。でも7話からは新章と呼べるぐらい、新たな物語が展開していきます。ヴィヴィたちが修正しなければならないシンギュラリティポイントも残り少なくなってきて、ますます目が話せなくなりますので、注目していてください。

種崎 私がなぜこんなに「どれも言えない…」と悶えているのかも観ていただければ納得していただけると思いますので、ぜひそれを確かめつつ今後の展開も楽しんでいただきたいです。
――最後に読者へのメッセージをお願いします
福山 ここまでご覧くださった方々はもうおわかりだと思いますが、『Vivy』は一本の太いドラマを描いていくんだ、という気概に満ちた作品です。最後まで観終えて、また最初から観返しても新たな発見がある作品になっているので、ぜひ結末までお付き合いいただければ幸いです。

種崎 これから先の展開を知っている私たちも『Vivy』という作品を毎週新鮮に楽しんでいます。どの話数にも「こう描かれるんだ!」という驚きが込められていて、7話以降もそんな面白さを皆さんにお届けできると思います。最後までヴィヴィの100年の旅を一緒に見届けてもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします。